人間の苦悩は、どのようにして生じるのか
私たちが、普段、見聞きするすべての事柄や現象には、必ず原因があります。しかし、原因だけでは結果は生じません。結果が出るように、原因(因と訳す)に働きかけるのを「縁」といいます。また因には、可能性の語感があり、「縁」にも、因の可能性を助ける「契機」の意味が含まれています。たとえば、ここにブドウの種が一つあるとします。この種は花を咲かせ、ブドウの実を結実させる可能性(因)を持っていますが、机の上に置いたままでは、おいしい果物にはなれません。何かの契機が必要になります。すなわち地におろし、太陽の光や肥料などが欠かせません。それらの縁を得て、はじめてブドウの種がブドウになるのです。 このように、無数の因と縁とが、限りなくかかわりあって、さまざまな結果を生じるのを「因縁の法則」と言います。また結果は、因がいろいろの縁(契機)によって起伏しますから「縁起」とも言います。「十二因縁」は、私たち人間の苦しみや悩みがどのようにして生じるのか、そのかかわりあいを追求して十二項の系列にして説いた教えです。