禅語ー好事不如無(こうじもなきにしかず)
好事不如無(こうじもなきにしかず) 欲望は果てしない。
好事とは文字道理好きなこと、楽しい事で誰もが望んでいることです。この言葉は、好事を否定するものではありません。好事を追い求めるあまり、周りが見えなくなってしまう心の弱さを戒めるのが「好事も無きにしかず」の教えです。
私たちは好事があれば、そのことに執着しがちです。執着すれば、さらに好事の多いことを求めるようになります。沢山のお金を手に入れれば、それが手放せなくなる。贅沢な暮らしに慣れると、質素な暮らしには戻りたくない。手に入れたものを守るのに必死になって、疑心暗鬼に陥り、まわりの人との関係もギクシャクしてくる。好事のために心がとらわれ、執着のもとになるくらいなら、いっそ捨ててしまったほうが良い、という事です。
この禅語にはもう一つ、悪い事や凶事を憎まないと言う意味があります。人生には良いこともあれば、悪いこともあります。「よいこと」だけを拾い、「悪いこと」を避けて生きることは、残念ながらできません。
禅の世界では、好事の分別を捨て、好事も悪しきこともあるがままに受けとめることを良しとします。
何事のにも捉われなければ、好事は好事として否定せず、捨てることもない。でも、自分からは求めない。あればあったらいい。心穏やかに生きるには自然体がいちばん、という事です。