2025-08-26
花謝樹無影(はなしゃしてきにかげなし)
蕾の季節はおとなしく
役者は「待つ」のが商売だといいます。自分を生かすいい役が来るのを、じっと待つ。ライバルがどんどん主役をとって人気が出てもあせらず、中途半端な役に飛びつかない。禅語に「花がしぼんで木に影もなし」とある。冬のあいだ花をつけない裸の木は、死んでしまったのではなく、次の春に向けて花を咲かせるエネルギーをたくわえているのだと。
連日120%の力を出し切って演技していた役者が、限界を感じたからニューヨークに勉強に行きたいと降板した。今は自分にとって蓄積の季節なのだと、鏡の前で覚悟した。