「人生の知恵」なる本にちょっと目を通したら次のような文章に出会いまし
た。
人が何らかの目的に向かって出発するとき、その拠り所となるのは、自分
自身の内部にしか見いだせない。私は何者であるか、と自らに問うことか
ら、人生のすべては始まる。
私とは何か?。何らかの事柄を慾している者である。慾している、とまで気
持ちが固まっていなくても、少なくとも何かを期待している者である。期待、
と言うほどには強くなくとも、何かを、いくぶんたりとも、好ましく思っている
者である。そうだ、それこそが自分自身である。
好ましいと思う方向へ動き出す、それが生命力なのである。
人間は、自分が嫌いであることを、外から上から命じられても、十分には
効果を上げることができない勝手者である。しかし、自分の内部からこみ
あげてくる意向に従うとき、おもいもよらぬ成果を生むことになるだろう。な
にかをしたい、何かになりたい、何かが欲しい、何かが好もしい、この気持
ちのうずきを自分で見届けることから、一人一人の人生が始まる。
その自分の内部の気持ちのうずきを、それを意慾と名付けよう。人間と
は、生きている者である。生きていることは、意慾を持っていることである。
自分の意慾を大切に育てる努力、それが人生である。自分の意慾に忠実
であること、それが素晴らしく生きることである。