第九節のおわり
*「能除一切苦」 正しい智慧こそが一切の苦を取り除いてくれる。
*「真実不虚」 一切は空、と受け止めなさい。
今までの経文によって理解すると、真実とは、この世のあらゆる存在や現象を、
“空すなわち実体なきもの、と受け止める事であり、その反対こそが虚妄というこ
とになるでしょう。
すなわち、“空を理解して悟りの境地に到達することこそが真実であり、その真実
に導いてくれるのがこれから説こうとする真言であるから、それ以外のものはすべ
て虚妄なのです。
つまり、とらわれの心を捨てて世の中の本当の姿を見る事が出来る・・これが真実
なのです。
私たち人間は全知全能ではない。自分の持っていること、知っていること、できる
とをすべて吐き出したとしても些細なものでしかないのです。
現在、人間は肉体と心という制約があるために、さまざまな本能と欲望によって苦
しめられています。もし、これらの本能や欲望を捨て去ることが出来たら、本来
“仏の種としてある仏性が外に出てきて、“最高のこの上なき悟り(阿耨多羅三
藐三菩提)の境地に入ることが出来る。すべてのものの真実の姿を見通すことが出
来るし(智慧)、どんなことでも成し得る能力(慈悲)を兼ね備えた存在になるこ
とも可能なのだ。と信じたのです。
でも、そんなことが本当に出来るのでしょうか? できるのです。
その証拠が、釈尊を含めた過去の仏であり、智慧の実践を説いた経典なのです。
要は、釈尊の存在を信じることが必要なのです。
仏様が我々平凡な人間に遺してくれた“真実の言葉すなわち“真言(呪)を唱え
てみようという事になるのです。もう理屈ではないのです。
次回から、いよいよ最後の第十節に入ります。