第七節つづき
*「無苦集滅道」 四つの真理すらも“空である。
迷いの世界には、四苦八苦というような、様々な苦しみが満ちています。その苦しみを断ち、悟りへと導く方法を説いたものが、“四諦とよばれる四つの真理、お経の中に出てくる「苦集滅道」です。
なぜこの世が“苦であるか?それは、渇愛とよぶべき、人間の執着心があるからです。
それを“集とよぶ。
では、その苦の原因を滅さない限り、いつまでたっても苦しみはなくならないはずです。そこで、苦の原因である渇愛を滅ぼし尽くそうというのが“滅です。そして、どうしたら
人間の持っている執着心を無くすことができるのだろうか?
それを説いたものが“道です。
“道には全部で八つの方法があります。“八正道( はっしょうどう)とよばれています。
苦の原因を滅ぼすための八種の実践方法です。
1) 自己中心の見方や、一方的に偏った見方をしないで正しく真実を見ること。
(正見)(しょうけん)
2) 自分本位の考え方をせず、大きい立場から、真理に照らし合わせて考えなさい と言うこと(正思または正思惟)(しょうし・しょうしゆい)
3) 正しい真理・法則に従い真実の言葉をかたる(正語)(しょうご)
4) 正しい真理・法則に従い行為を行う(正業)(しょうごう)
5) 正しい職業、正しい収入で暮らしを立てること。(正命)(しょうみょう)
6) 正しい使命・目的に対して、正しく励み、努力し、怠ったり、脇道へそれたりしな い。 (正精進)(しょうしょうじん)
7) 正しい教えのみ、真理、法則を見、強く思うこと。(正念)(しょうねん)
8) 心を常に正しく置き、周囲の影響や環境の変化によって動揺することが無いよ うにする。(正定)(しょうじょう)
以上の八つです。
八正道の言おうとするところは、人間の行為のすべてを、それが身体での行為であれ、口で行う行為であれ、さらには心で行う行為であれ、正しくせよ、ということです。
正しくさえすれば、自然に執着心は消滅し、この世の苦しみはなくなり、やがて悟りの境地に到達できる、というのです。結局のところ、この世を苦しみと感じる事さえも、自分自身がまだまだ執着心を持って、苦と楽とを差別している、ということに気が付く必要があるでしょう。人間の苦の原因の根本は「執着心」と言えるのではないでしょうか。