*「不増」「不減}(ふぞう・ふげん)
お経の中で、「不増」と言っているのは、物事は一部の現象や姿だけから判断すべ
きではない、と言っています。
ちょうど“金は天下のまわりものという言葉に象徴されているように、発行された
紙幣や貨幣が一定しているならば、個人として持っている金銭の額には変化が あったとしても、全体から見れば不増不減であるようなものです。
《総訳》
“美しいものを尊び、醜いものを侮辱する
“強いものに憧れ、弱いものは軽くみる
“富を尊び、貧を下に見る
“大なるものを崇め、小なるものは捨てる
人間は、なんと“相対的なるものに左右されて生きているのでしょうか?
なぜ自分なりの基準、自分だけの“色めがねだけでもって、よのなかを見、
かつ暮らしているのでしょうか?
そういうものが「苦」の原因になるとも知らずに・・・・・。
この世の中に“絶対など存在しないのです。“絶対と信じている人間はいても
“絶対はない、すべて“まぼろしなのです。このことを説いているのがこの章の言
葉です。
・世の中のあらゆるものは“空なのだから、・・・・・是諸法空相
・それは本来、生じたものでも滅したものでもない・・・不生不滅
・汚れたものでも浄らかなものでもない・・・・・・・・不垢不浄
・増えたものでも減ったものでもない・・・・・・・・・不増不減
この真実に、人間はなかなか目を向けようとしない。とらわれの心を持っているか らです。とらわれの心は“そこに何ものか永遠なる存在があると思い込んでいるから です。
執着という名の不幸を取り除くことが大切です。
こういう落とし穴に陥らぬよう、もっと真実に目を向け。自分だけの思い込みなど捨 てなさいと説いているのです。
「般若心経で学ぶ」はこれが今年最後です。来年またよろしくお願いいたします。
皆さんどうぞ良い年をお迎えください。