*他是不有吾 (たはこれわれにあらず) 人生にピンチヒッターはいない
曹洞宗の開祖、道元禅師の修業時代の話で、禅の道を求めて宋代の中国に留学した若き道元は、夏の炎天下で、食事を担当する年老いた典座が、茸を干しているのを見ました。
老典座にはつらそうな仕事なので、道元は思わず「そんなきつい仕事は、使用人に頼めば良いではありませんか」と言いました。老典座の答えは「他は是れ吾にあらず」、他人に任せてのでは自分の修行にならないということです。道元が気遣って「なぜ、こんな暑い中で苦労されるのですか?」と尋ねると、老典座は「さらに何れの時をかを待たん(今やらずに、いつやるのか)」と答えました。
面倒なこと、気乗りしないことも、今この時にすべきことは後回しにしない。この日、この時がつねに「一大事」だから、決して疎かかにしてはならないことを、この言葉は示しています。
これは、私たちの日常にもあてはまります。注目を集めやすい仕事、目立たない仕事、楽な仕事やきつい仕事など、様々なものがありますが、どんなことでも求められる役割を、一心に勤めあげ、全力を尽くすことが大切です。
一人ひとりの人生には、ピンチヒッターもピンチランナーもいません。それぞれが、一人で歩まなければなりません。やる気がなかなかでないとき、「他は是れ吾にあらず」と、そっと唱えると、元気を分けてもらえる気がします。
人生は一人で歩まなければならない厳しい現実です。と言う事ですね。